「なぜ新規事業は成功しないのか」(大江建著)のメソッドを使って新規事業のコンサルティングをしています。

「アセアン人材育成プログラム」をミャンマー商工会議所で実施

2012年12月14日

「アセアン人材育成プログラム」をミャンマー商工会議所で実施
 
■日本人と現地のビジネスパーソンが協働で学び考える
 「ASEAN人材育成プログラム」を11月26日から12月4日の9日間にわたり、ミャンマーのヤンゴンで実施しました。このプログラムは文部科学省の「大学等産学官連携自立化促進プログラム」の一環として実施されているもので、特定非営利活動法人アジア科学教育経済発展機構が早稲田大学研究推進部より委託をうけて運営しています。受け入れ先としては、ミャンマー商工会議所(UMFCCI:Republic of the Union of Myanmar Federation of Chambers of Commerce and Industry)が協力をしてくれました。
 今回の実施内容は昨年度(昨年度の実施報告はこちら)のものをベースとしており、プログラム実施地域への進出を計画する日本企業が現地調査と現地で活躍できる人材育成を兼ねて社員を派遣し、その社員は現地の若手ビジネスパーソンとともに調査を実施する、というものです。
 今年度のプログラムには、7つの日本企業から8人が参加しました。いずれの方も、将来はASEAN地域に派遣を予定されている幹部候補社員です。参加者はそれぞれ、このプログラムで達成すべき課題を自社から与えられています。例えば、「アウトソーシング先候補を探してくる」(IT企業)、「総代理店を探す」(化粧品メーカー)、「各種学校設立の可能性を探る」(教育業)などです。
 一方、現地での参加者として協力してくれた人は、日本の国際大学や一橋大学への留学経験者を含む、合計28人でした。そこで、日本人1人と3人程度のミャンマー人とでチームをつくり、そのチームで各日本人が抱える課題の解決にあたることとしました。チーム内の共通の言語は英語ですし、講義や発表も英語で行なわれますから、日本人の参加者もレベルに関わらず英語でコミュニケーションをせざるを得ません。
 
■「理論と実践」を織り交ぜたプログラム
 このプログラムは、大きく分けて二部構成になっています。最初の5日間では、各企業の現地進出戦略のたたき台としての第1版を完成させることを目標とします。その後の4日間では、ヒアリング調査やデータ収集などを行い、たたき台を見直した改訂版を策定します。
 詳細な日程は次表のとおりです。座学研修のみならず、実地調査や企業訪問、発表などを織り込み、多面的な要素を入れています。また、パーティの場も設けられ、参加者同士の距離が近づくような工夫もされています。

表:プログラムの日程
  

■「知識と戦略の同期化プロセス」が好評 
 このプログラムの最終目的は、日本企業の現地進出戦略を日本人社員がミャンマー商工会議所所属の現地企業の若手社員とともにチームを組んで策定することにあります。これを策定するプロセスから得られるメリットは非常に大きなものがあります。

 まず、日本企業からの参加社員にとっては、次のようなメリットがあるといえるでしょう。
・     ミャンマーを中心にしたASEAN地域でのネットワーク形成
・     英語によるビジネスコミュニケーションスキルの向上
・     現地のビジネスマンを指揮するためのリーダシップの研鑽
・     ASEANのビジネス環境の理解
・     ASEANにおける自社のビジネスモデル策定
・     アトリビュート分析など戦略論応用力の取得

 一方、プロジェクトに参加した現地企業の社員にとっては次のようなメリットが考えられるといえるでしょう。
・     日本企業や日本的マネジメントの理解
・     戦略論の理解
 
 このように理論と実践を繰り返し行なうことで「知識と戦略が同期」す意義は非常に大きいものと思います。特にミャンマーと日本が共同で学習と実業を取り掛かるという(Knowledge Synchronization)コンセプトの有効性について、ミャンマー商工会議所(日本の経団連に相当)ウィン・アウン会頭も高く評価してくれました。会頭の後押しにより、プログラム実施中に地元の2つのテレビ局が講義やチーム作業の状況を報道してくれました。
 今回の成果について、参加者対象に行なったアンケート調査などの仔細な分析はこれから行なうところですが、その成果を踏まえてプログラムを改訂していこうと準備しています。