「なぜ新規事業は成功しないのか」(大江建著)のメソッドを使って新規事業のコンサルティングをしています。

日本企業の革新性を高めるために

2013年02月03日

日本企業の革新性を高めるために

■日本企業の新規事業領域の売上貢献比率の低さ目立つ
 安倍政権が掲げる日本経済の成長戦略の一つは、企業の競争力を回復させる「産業再興プラン」だ。それを実現するためのキーワードは“イノベーション”であり、それにより製造業復活につなげるというのが政府の方針となっている。
 こうしたなか、気になるデータが発表された。デロイトトーマツコンサルティング株式会社から発表された「日本企業のイノベーション実態調査 ~成長企業の創出に向けて~」である。2012年夏に335社からの有効回答を得て実施されたアンケート調査だ。
 この調査によると、日本企業の連結売上高に占める新規領域から生み出された売上高の割合は6.6%である。海外での同様の調査では、米国企業は11.9%、中国企業は12.1%となっており、日本企業の新規領域の売上貢献比率は三カ国中最低だ。

■革新領域での成長を実現できない要因
 この調査で指摘している多くの日本企業が革新領域で成長を実現できない要因を私なりに解釈すると、次のような点になる
①     イノベーティブな人材の育成に組織的に取り組んでいない。取り組んでいても非常に形式的である。
②     新規事業を創出するための活動が「既存の延長」にとどまっており、そこから生み出される事業は必然的に既存領域中心になる。
③     「スクリーニングプロセス」は整備されつつあるが、「磨き上げプロセス」がなければ成果につながる良質な新規事業を市場に投入することはできない。
④     新規事業が新社長の思い付きのイベントなどとして取り上げられ、新規事業を継続的に輩出するメカニズム化には至らない。
⑤     オープンイノベーションが掛け声だけにとどまっている。「知的財産」を“守る”だけで、収益源化が促進されていない。
 
 まず、ロールモデルを輩出していくためには、革新的な取組みをした人を積極的に評価するといった人事制度の改革などが必要であろう。仮にその革新的な取組みが成功に結びつかなかったとしても、チャレンジングな姿勢を評価する組織をつくることで、企業風土の改革が進む。そのためには、研究者が自由に活動したり、社外とも幅広く交流したりする時間と場を確保しなければならない。それが新たなアイデアの発想を生み出すことにもつながる。もちろん、こうした一連の活動が有機的に作用するためには、新規事業立ち上げを担う人材を育成し、新規事業立ち上げノウハウが社内に留まる仕組みを構築しなければならない。

■組織全体の意志とコミットメントが不可欠
 ただ、問題は、ここで挙げられた指摘は多くの研究開発型企業に当てはまるとしても、その解決策は一様ではないということだ。個々の企業の特性や環境にあったきめ細かい処方箋が求められる。更に、その処方箋が出されたとしても、成果は一朝一夕に現れるものではない。トップを含む組織全体の強い意思とコミットメントが重要である。
 私どもは、一貫して、「技術シーズの事業化」をテーマに活動をしてきた。ここで培ってきたノウハウを活かし、それぞれの企業に応じたソリューションを提供することで、革新的な日本企業の創発に貢献したいと考えている。