「なぜ新規事業は成功しないのか」(大江建著)のメソッドを使って新規事業のコンサルティングをしています。

福島市の高校で起業家教育を実践しました。

2012年03月19日

福島市での高校生を対象にした起業家教育実践のレポートと、そのプログラムの特徴である「復興エコシステム」についてご報告いたします。
 
■マイビジョン
私が理事長をしている非営利特定活動法人マイビジョンでは、東北大震災からの復興には起業家精神が欠かせないという確信のもと、福島市において起業家教育を実施しました。これは、私どもが以前から提唱していた「Learning from Helping」、つまり、学びあい・助け合いの場の創設という精神を実践したものです。
実施に至るまでの道のりは容易いものではありませんでした。震災後の5月中旬から実施案を企画し、早い段階でスポンサーとなってくださる企業も現れました。しかし、福島県立高校の人事異動が4月1日ではなく8月1日に発令されるなど、現場では震災対応のための事態が次々起こりました。このため、プログラム開始を当初予定していた7月から急遽9月に変更するなど、臨機な対応を迫られました。
 
■復興エコシステム
このプログラムの特徴は、「復興エコシステム」と呼ぶべき仕組みを内包しているという点にあります。つまり、復興を教育といった側面から支えるための循環型の仕組みであり、このような仕組みを実践の場で構築できたという点に非常に大きな意義があると自負しています。その仕組みとは、次のような5点から成ります。
まず、第1番目に、小学生や未就学児を対象としたアートイベントを開催したことです。福島県内の子供たちは、余震に対する恐怖だけでなく、放射能の影響から屋外で遊ぶことができないことによるフラストレーションなど、震災以降、大変なストレスにさらされてきました。その状況を少しでも打破するために、NPO法人子ども未来研究所の協力によりアートセラピストを派遣してもらい、「元気な福島」「元気な私」などといった課題で子ども達に絵を書かせるイベントを昨夏以降数次にわたって開催しました。第2番目に、このイベントで描かれた絵を、福島県立高校のデザイン科の生徒に渡して、それを元にいろいろなデザインを作成してもらったという点です。そして、第3番目に、これらのデザイン原案を「福島を元気にする商品の開発・販売」というテーマに挑む高校生チームに見せて、実際の商品企画へと展開しました。第4番目に、その商品について事業計画を策定し、実際の商品の製造へと発展させました。製造は、今回の震災で甚大な影響を受けた地域の中小企業メーカーに依頼しました。このようにして製造された商品は、高校生自ら販売活しました。第5番目に、販売で得た収益金については、第1番目に挙げたようなの福島県の児童らのアートイベントに充てることを予定しています。
このように、一回の癒しのイベントを開催するのではなく、非常に長期にわたる活動を実現していくための仕組みをこの「復興エコシステム」の中で実現したのです。
 
■活動の流れ
今回の活動は、次のような流れで実施しました。第1回目の高校生向けプログラムのキックオフ会を9月23日に福島市で開始しました。参加高校生は、小高商業高校、福島高校、福島西高校、橘高校などから15人ぐらいでした。
その後、秋から冬にかけては、ビジネスモデルについて検討したり、実際のビジネスの現場で活躍する商品デザイナーからデザインの指導を受けたり、製造してくれる会社の工場見学に伺ったりなど、精力的な活動を続けました。1月には最終デザインと仕様を固めて商品を発注、日本のものづくりの素晴らしさを物語る商品が完成しました。こうして出来上がった商品を、2月11日と19日に福島市内のスーパーマーケットで販売。その様子は、地元紙やNHK福島支局のニュースで報道されるなど、大いに注目されました。
2月25日には、スポンサー企業のご関係者、報道機関、環境庁除染関係者、地域の商工会青年部、日本ベンチャー学会の事務局など、総勢40人以上にご参集いただき、最終報告会を開催しました。