当社代表取締役 大江建が「いたばし起業塾」(主催:板橋区企業活性化センター)にて講演します。
<テーマ、主な内容>
「なぜ新規事業は成功しないのか? ―仮説のマネジメントによるイノベーション―」
・日本企業に新規事業が必要な理由
・仮説のマネジメントとは
・仮説のマネジメントの導入事例
・仮説のマネジメントを利用した新事業推進の要点
・仮説のマネジメントを成功に導くツール紹介
■開催要項■
日時:2013年9月11日(水)18時~20時
場所:板橋区立企業活性化センター研修室
詳細のご案内、お申込みはこちらから(外部リンク)
当社代表取締役 大江建が
ビズジェネ・カンファレンス Vol.6 集中講義:「顧客開発モデル/仮説指向」による事業開発
で講演します。
講演タイトルは、
『いまなぜ日本企業に新事業が必要か? ~仮説のマネジメントによるイノベーション~』
201
4.12.24
です。
ただ今、ご参加者を募集中です。
日時:2013年8月28日(水) 13:00~18:00 (受付開始12:30~)
会場:K.I.T.虎ノ門大学院 金沢工業大学 虎ノ門キャンパス
主催:株式会社翔泳社
詳細な情報ならびにお申し込みは、こちら (外部リンク)
2012年4月~2013年3月まで、大阪梅田にて、阪神電気鉄道株式会社様主催の「梅田MAG経営戦略セミナー」の一講座として、「実験経営学講座」を実施いたしました。
本講座は、アジア各地からの留学生と日本のビジネスマンがチームを組んで、大阪の中小企業のアジア地域進出についての戦略を策定し、事業計画書(ビジネスモデル)を作成&企業に提案するというものでした。
計14回の講座では、BMC(ビジネスモデルキャンバス)をベースに、それをまとめるための補助ツールとして、アトリビュート分析法や消費チェーン分析法を学ぶほか、BMO評価法にて、作成中のBMCについて評価&修正を加えながら最終案をまとめていきました。
今回の取り組みにご賛同いただき、ご協力いただいた企業のひとつである、大阪市福島区の女性肌着メーカーである株式会社高繊様からは、講座について以下のようなご感想を寄せていただきました。
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【株式会社高繊 専務取締役 高橋秀典氏】
このたび「実験経営学講座」において提案していただいた当社の海外進出計画案は、早速に現地をこの目で確かめて、実行を検討したいと考えるほど、非常に内容が濃く、充実したものでした。
特に、留学生を中心に集めていただいた現地消費者の生の声を調査した商品嗜好分析結果(※1)は、これまでのイメージを一新するような発見に満ちた調査分析で、今後の参考として活用していきたいと思います。
製造している商品の性能などには十分な自信はありましたが、現地の消費者はどのような商品を好むかという実態に即した情報が少なく、当社の商品が受け入れられるか確信はなかなかもてなかったのですが、今回のようなアプローチによる分析とそれを基にした参入計画案は、参入検討の参考資料として中小企業にとっては大変ありがたいものでした。
また、マーケティング情報とともに、様々な参入条件なども整理していただけましたので、今後作成してもらった計画を参考に実行に移してていきたいと考えています。
※1:アトリビュート分析法
*************************************
ほかにも、参加した受講生および留学生からも、学んだツールを今後の業務に活かしていきたいなど高い評価をいただきました。
■梅田MAG経営戦略セミナー「実験経営学講座」の開催概要
1.開催期間 2012年4月~2013年3月
(各月1回、計14回(うち公開講座2回含む))
2.開催場所 ハービスOSAKA(大阪市北区梅田)
3.受講生数 26名(うち留学生・学生12名)
4.主催 阪神電気鉄道株式会社
5.講師 大江 建先生((株)総合コンサルティングオアシス 代表取締役)
※講座の詳細につきましては、以下ブログをご参照ください。
https://umeda-mag.net/blog_list
以上
(参考)梅田MAG実験経営学講座の講座構成概要
回 |
テーマ |
内容 |
1 |
講座① |
イントロダクション、受講生自己紹介 |
2 |
公開講座(講座②) |
実験経営学概論、アトリビュート分析法 |
3 |
講座③ |
アトリビュート分析法のケーススタディ&発表 |
4 |
講座④ |
消費チェーン分析法のケーススタディ&発表 |
5 |
講座⑤ |
ビジネスモデルキャンバスのワークショップ |
6 |
講座⑥ |
逆損益計算書のケーススタディ |
7 |
公開講座(講座⑦) |
グローバル・コミュニケーション・デザイン |
8 |
講座⑧ |
5F分析法(チーム課題グループワーク&発表) |
9 |
講座⑨ |
各チーム課題分析(顧客分析)グループワーク&発表 |
10 |
講座⑩ |
事業課題分析(ビジネスモデルキャンバスをもちいて) |
11 |
講座⑪ |
事業課題研究中間発表会 |
12 |
講座⑫ |
BMO評価法:講義&グループ研究 |
13 |
講座⑬ |
事業プラン検討、作成グループワーク |
14 |
講座⑭ |
事業計画発表会 |
「ビジネスプラン」から「ビジネスモデル」へ
■「ビジネスモデルコンテスト」
2013年5月上旬、2日間にわたって開催されたハーバード大学イノベーションラボで開催された2013 International Business Model Competition (以下、IBMC)に参加してきました。3回目を迎える今回は世界10カ国から1,383チームが応募しており、そのなかから書類選考を経た28チームの大学生・大学院生が当日発表の機会を得ました。
IBMCの特長は、従来のビジネスプランコンテストを大きく見直している点にあります。ビジネスプランコンテストでは、インターネットや白書などの2次データを元に策定された事業計画書やそれに付随する財務諸表、組織体制図のできばえの良し悪しを評価してきました。この結果、形式的な事業計画書を書くことが目的化し、戦略の本質的な議論や実現可能性、実効性がほとんどなされていなかったといえるでしょう。事実、ビジネスプランコンテストで優勝案件が、起業に結びついた例が限定的であるということが、その有効性を疑問視する根拠となっています。
IBMCは、ビジネスモデルコンテストの有効性の反省に基づき、スタンフォード大学のSteve Blank教授、BYU大学のNathan Furr教授の提唱により開始されたものです。コンテストの審査基準は次のようなものです。
① 起業にあたってのビジネスモデルが設定されており、それに伴う仮説が明確である
② 実際に仮説が検証されている
③ 検証結果がビジネスモデルにフィードバックされ、修正されている
つまり、IBMCの評価対象は、仮説をたてて「検証」し、それを元に修正を加えるという『プロセス』にあり、極めて『動的』なものです。この検証プロセスを通じて起業の実現性を高めると同時に、金銭的にも社会的にもインパクトのある事業を発想したことが、このコンテストで評価されるのです。
実は、ハーバード大学のビジネスプランコンテストでの今年の優勝チームも、同じ内容でIBMCに参加していたのですが、IBMCでは入賞の8位までにも入ることができませんでした。いくら事業計画が優れていても、仮説が検証されていない“静的”な計画書では、起業することはできても、成功する可能性が低いと判断されたことが、このような評価につながったのです。こうした点に、「優れた計画書の作成」を目的とせず、「活用され、修正される計画書」を手段とし「成功する起業活動を創出する」というIBMCの意向が現れているのです。
■ビジネスモデルキャンバスと仮説の設定
IBMCで新事業の仮説を明確化するツールとして活用されていたのが、ビジネスモデルキャンバス(Osterwalder & Pigneur, 2010)です。ビジネスモデルキャンバスとは、ビジネスモデルを次の9つの要素に分けて考える方法です。9つの要素とは、①顧客セグメント、②顧客価値、③チャンネル、④顧客関係、⑤経営資源、⑥主要業務、⑦提携関係、⑧収益のながれ、⑨コスト構造、です。
ビジネスモデルキャンバスの長所は、これらの諸要素を1枚の紙に表し概観できることです。つまり、事業計画書の要旨であり、新事業の仮説をまとめたものであるともいえます。
■重要視される「リーン・スタートアップ」
この「仮説」-「検証」プロセスの基盤になっているのが「リーン・スタートアップ(lean startup)の考え方です。リーン・スタートアップは、市場からのフィードバックにより、ビジネスモデル上の仮説を早く、廉価に検証していこうという考え方です。事業を大きく動かした後に大きな失敗をするのでなく、まず簡易なプロトタイプをつくり、それに対して顧客の声を聞きながら少しずつ修正をしていくことで成功確率をあげていくことを目指しています。ベンチャーキャピタルの投資案件の成功確率は1割とわれますが、これをリーン・スタートアップの考え方を利用することで3割に引き上げ、時間リスクと投資リスクを軽減することをねらっています。
このようなリーン・スタートアップの考え方は、ベンチャー企業の立ち上げで脚光を浴びているが、決して新しいものではありません。社内ベンチャーや新規事業の推進の手法として、ワートンスクールのIan MacMillan教授やコロンビア大学のRita MacGrath教授が提唱してきたマイルストン計画や、筆者が長年主張している「実験経営学」もまさにこの考え方に近似しているものです。
不確実性の高い21世紀には、形式的なビジネスプランでは通用しません。新事業の実現を目的とするビジネスモデルの策定が非常に重要になってきているといえるでしょう。
アセアン・日本起業家教育評議会シンポジウム
「日本・アセアン人材育成研修プログラムにみる人材育成のありかた」
3月14日(木)開催のお知らせ(=好評のうちに終了しました)
当社代表取締役である大江建は、早稲田大学研究推進部参与として
2003年より約10年にわたりアセアン諸国で実践的起業家教育(COBLAS)を行なって参りました。
このたびその成果について発表する
アセアン・日本起業家教育評議会シンポジウム「日本・アセアン人材育成研修プログラムにみる人材育成のありかた」が次のように開催されます。
是非、ご参加ください。
■シンポジウムの内容■
早稲田大学では、文部科学省「大学等産学官連携自立化促進プログラム」の一環として、
2011年度~2012年度に日本・アセアン人材育成研修プログラムを実施しました。
このプログラムは、アセアンのビジネスマンと日本のビジネスマンが共に事業戦略を学び、
協力してビジネスの発展を目指すというものです。
この度のシンポジウムでは、11年度にマレーシア、12年度にミャンマーで実施した2回の実施結果についてプログラムの講師陣や
参加者からの発表を中心に紹介し、今後の可能性と展望ついてご説明します。
■開催要項■
日時:2013年3月14日(木) 13:30~16:30
場所:早稲田大学 早稲田キャンパス14号館 514教室
早稲田大学キャンパスマップ
(↑外部リンク)
■プログラム■(敬称略)
13:30 開会の挨拶 早稲田大学研究推進部 参与 大江 建
13:45 マレーシアでの研修事例 マレーシア国民大学 Dr. Tih Sio Hong
14:15 マレーシア進出計画 参加者代表
14:30 中小企業の海外進出 中小企業庁国際室 室長 守山弘道
15:15 ミヤンマーでの研修事例 国際大学 Dr. Zaw Zaw Aung
15:45 ミヤンマー進出計画 参加者代表
16:00 研修プログラムの今後の展望 早稲田大学研究推進部参与 大江 建
16:15 閉会の挨拶 特定非営利活動法人アジア科学教育経済発展機構理事長 浜野正啓
※プログラムは予告なく変更される場合があります。
■お問い合わせ、お申し込み先■
※直接、次の当シンポジウム開催事務局にご連絡ください。
お申し込みの場合は、
①会社・団体名、②部署名、③お役職、④お名前、⑤お電話番号、⑥e-mailアドレス
をお書き添えのうえ、メールまたはファックスにてお送りください。
【当シンポジウム開催事務局】
e-mail:ishida★asiaseed.org
(★を@に変更してください)
日本企業の革新性を高めるために
■日本企業の新規事業領域の売上貢献比率の低さ目立つ
安倍政権が掲げる日本経済の成長戦略の一つは、企業の競争力を回復させる「産業再興プラン」だ。それを実現するためのキーワードは“イノベーション”であり、それにより製造業復活につなげるというのが政府の方針となっている。
こうしたなか、気になるデータが発表された。デロイトトーマツコンサルティング株式会社から発表された「日本企業のイノベーション実態調査 ~成長企業の創出に向けて~」である。2012年夏に335社からの有効回答を得て実施されたアンケート調査だ。
この調査によると、日本企業の連結売上高に占める新規領域から生み出された売上高の割合は6.6%である。海外での同様の調査では、米国企業は11.9%、中国企業は12.1%となっており、日本企業の新規領域の売上貢献比率は三カ国中最低だ。
■革新領域での成長を実現できない要因
この調査で指摘している多くの日本企業が革新領域で成長を実現できない要因を私なりに解釈すると、次のような点になる
① イノベーティブな人材の育成に組織的に取り組んでいない。取り組んでいても非常に形式的である。
② 新規事業を創出するための活動が「既存の延長」にとどまっており、そこから生み出される事業は必然的に既存領域中心になる。
③ 「スクリーニングプロセス」は整備されつつあるが、「磨き上げプロセス」がなければ成果につながる良質な新規事業を市場に投入することはできない。
④ 新規事業が新社長の思い付きのイベントなどとして取り上げられ、新規事業を継続的に輩出するメカニズム化には至らない。
⑤ オープンイノベーションが掛け声だけにとどまっている。「知的財産」を“守る”だけで、収益源化が促進されていない。
まず、ロールモデルを輩出していくためには、革新的な取組みをした人を積極的に評価するといった人事制度の改革などが必要であろう。仮にその革新的な取組みが成功に結びつかなかったとしても、チャレンジングな姿勢を評価する組織をつくることで、企業風土の改革が進む。そのためには、研究者が自由に活動したり、社外とも幅広く交流したりする時間と場を確保しなければならない。それが新たなアイデアの発想を生み出すことにもつながる。もちろん、こうした一連の活動が有機的に作用するためには、新規事業立ち上げを担う人材を育成し、新規事業立ち上げノウハウが社内に留まる仕組みを構築しなければならない。
■組織全体の意志とコミットメントが不可欠
ただ、問題は、ここで挙げられた指摘は多くの研究開発型企業に当てはまるとしても、その解決策は一様ではないということだ。個々の企業の特性や環境にあったきめ細かい処方箋が求められる。更に、その処方箋が出されたとしても、成果は一朝一夕に現れるものではない。トップを含む組織全体の強い意思とコミットメントが重要である。
私どもは、一貫して、「技術シーズの事業化」をテーマに活動をしてきた。ここで培ってきたノウハウを活かし、それぞれの企業に応じたソリューションを提供することで、革新的な日本企業の創発に貢献したいと考えている。
第3回カンボジアビジネスモデルコンテスト
■英語での募集に82件応募
2013年1月26日にカンボジア国プノンペン市にあるCJCC (カンボジア日本交流センター)で第3回カンボジアビジネスモデルコンテストが開催されました。
このコンテストは、公益財団法人CIESF(カンボジア国際教育支援財団、東京都港区、理事長:株式会社フォーバル代表取締役会長 大久保秀夫氏)とカンボジアの名門私立大学であるプティサストラ大学が共催、早稲田大学が協力という形で開催されているものです。
2012年7月1日にキックオフ会を開催して、ビジネスモデルの公募を開始。同年10月末に締め切ったところ、カンボジア全土の大学生から82件の事業モデルの応募がありました。このコンテストへの応募は、現地語であるクメール語ではなく、英語で行なうこととなっています。日本で同様の募集形態で行なったとしたら、80件の応募は難しいのではないかと思うと、複雑な心境です。
こうして応募された各案件は、まず、書類審査で20チームに絞られます。その後、面接審査を経て、10チームが最終発表チームとして選ばれました。
■「ビジネスプランコンテスト」から「ビジネスモデルコンテスト」へ
今回で3回目を迎えたこのコンテストですが、今年は、昨年までの「ビジネスプランコンテスト」から、「ビジネスモデルコンテスト」へと内容を刷新しました。
その理由としては、大学生にとっては「ビジネスプラン」の作成は、財務諸表の作成などのハードルが高く、それにエネルギーがとられてしまうという点があります。このため、事業の本質を追求することが疎かになるという傾向が懸念として指摘されてきました。実際、私も長年審査員を務めてきましたが、裏づけのない損益計算書の推計を見せられても、優勝チームの作成した事業計画書でさえ「砂上の楼閣」という印象を持つことを禁じえませんでした。因みに、このような「ビジネスモデルコンテスト」の開催は、国際的に拡がりつつあります。例えば、2011年には米国のBringham Young University開催されましたし、また、2013年5月上旬にはハーバード大学でも開催される予定です。
こうしたことを背景に、今年は、事業戦略の提示に重点を置きました。審査と活動の流れは次のようになっています。
■審査と活動のプロセス
第一段階としては、書類審査や面接審査の時点で示された事業を展開するうえでの“仮説”が、最終発表会に向けてどのように“検証”されたのか、というプロセスを重視しました。検証のためには、想定顧客などの関係者へのインタビューなどが必要となります。こうした過程を経て、どれだけ当初に置いた仮説が検証されていったのかをみていきます。
それと併行して、事業モデルの磨き上げに注力しました。2012年11月には、4日間かけて最終発表のチームに対して、事業モデルについてのワークショップを開催しました。そのワークショップでは、Business Model Generation(2010)を参考書とし、さらに、アトリビュート分析、消費チェーン、5W1H、エレベータスピーチなどの手法を学生達に教授し、学生達はそれらの手法を用いて自分のビジネスプランを約3ヶ月間で見直していくのです。
このようなプロセスを経て、2013年1月26日に最終発表会が開催されました。会場には約400人にのぼる関係者や学生が集まり、関心の高さが窺われます。各チームの持ち時間は30分。15分の発表、15分の質疑応答という内訳です。
審査の結果、第1位に選ばれたのは、「Khmer Zucchini Handicraft (カンボジアのへちまを使ったスポンジ)」の事業を提案したプティサストラ大学のチームです。彼らには、$3,000の副賞が授与されました。第2位は、カンボジア工科大学の学生の「有機ヤシ酢」の事業モデル、第3位はカンボジア工科大学の学生の「Food Technical Consultation Services」という事業モデルで、それぞれ$2,000、$1,000の副賞を授与されました。さらに、第1位と第2位の事業計画は、今年3月13日ミヤンマーのヤンゴン市で開催されるMcKinsey Mekong Business Plan Challengeへの参加権も得ました。
会場には、来賓として教育省のピッチ・ソーポノフン長官もみえ、学生に向けた講演をしてくださいました。国をあげて、学生達の起業家精神涵養を奨励していこうという思いが感じられました。
新年あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いたします。
2012年は、今まで培ってきたASEANの大学とのネットワークを活かし「グローバル人財の育成プログラム」をマレーシアとミャンマーで行い、新たな一歩を踏み出すことのできた年でした。このプログラムでは、現地の学生との共同作業でマーケティングリサーチを行います。この手法は、現地市場を理解するうえでも、現地の人とのコミュニケーションをとるうえでも大変役立ったとの声を頂いております。(活動の詳細は こちらでご紹介しております→→ マレーシア編 ミャンマー編)
また、私どもでは20年以上にわたって新事業に特化したコンサルティングを行っておりますが、今までに関わったテーマが世の中に出ることも多くなってきました。それらの情報に感慨深く接しております。最近ではそのコンサルティング手法の一つである技術戦略分析(STAR)や事業評価法(BMO)は評価手法としてだけでなく、研究者の創造性の事業的視点を持つなどの教育の一環として、あるいはメンバー間や経営陣とのコミュニケーションの手段としての評価をいただいております。
私どもではこれらツールを「不確実性の時代」に対応するためにというコンセプトで開発しておりますが、それはグローバル人財育成にも役立つものであるということが今年1年のASEANプログラム試行で確認することができました。新事業でも成長するASEAN市場をにらんだうえでの計画策定が不可欠です。
本年も新事業コンサルティングをはじめ、グローバル人財育成の場でも企業の発展に尽力できるようスタッフ一同精進してまいりますのでよろしくお願いいたします。
2013年1月吉日
㈱総合コンサルティングオアシス 代表取締役 大江 建
代表取締役 岡田やすこ
■大学、民間、公的それぞれの施設を見学
2012年10月24日から3日間、インドネシア・マレーシアの中小企業庁、タイやインドネシアのインキュベーションセンターの責任者など12人が来日されました。今回の来日の目的は、ASEANで本格的なインキュベーションセンターを設立するにあたり、日本での事例をリサーチすることです。このため、大学、民間、行政機関それぞれのセクターが運営するインキュベーションセンターを視察するとともに、入居企業にヒアリング調査をしました。
私は、東京大学産学連携本部の各務茂夫教授と連携して、次のような施設へこの調査団をご案内しました。大学関連施設としては東大関連ならびに早稲田大学のインキュベーションセンター、民間のものとしては寺田倉庫が支援しているサムライ・スタートアップ・アイランド(東京都品川区)、サイバーエージェントによるインキュベーションオフィス・Startup Base Camp(東京都港区)、行政関連としては千代田区の支援でちよだプラットフォームスクウェアの各施設です。
■早稲田大学における“Entrepreneurship-Eco-System”
そもそも私にこのような案内役が回ってきたのは、2006年から2010年の約4年間、早稲田大学インキュベーションセンター長を務めていたためです。ここで実際にインキュベーションセンターの運営に携わってきたわけですが、他の施設については知見が乏しかったというのが正直なところです。今回、このような機会を得て、いくつかの施設の運営形態や状況を知ることができました。今までのインキュベーション運営の経験を整理するうえで非常に役に立ったと考えています。
そこで、今回の結果をご報告する前に、私が携わってきた早稲田大学のインキュベーションセンターについてご説明しましょう。
早稲田大学のインキュベーションセンターが対象とするのは、教授や各研究室発の技術をベースにしたベンチャーと、学生のベンチャーが対象でした。「起業家教育」、「ベンチャー研究」、「ベンチャー支援」の3つの要素をベースに、早稲田大学“Entrepreneurship-Eco-System”を構築しました。
このシステムから誕生したのが、今では東証第1部上場企業となった株式会社リブセンスです。社長の村上太一氏は、早稲田大学一年生のときに大和証券の寄付講座ベンチャー基礎論を受講し、そこで発表したビジネスアイデアで最優秀の事業アイデア賞を獲得しました。そのときの副賞が学内インキュベーションセンターの1年間無料利用権であり、これを機に彼は会社を設立したのです。当インキュベーションセンターは、村上氏が卒業するまで支援を行いました。そして、卒業2年目にはJASDAQに25歳の最年少社長として上場を果たし、2012年10月には東証1部にやはり史上最年少で上場したのです。私の実感では、Entrepreneurship Eco-systemがうまく運営できれば、1年で1社ぐらいは学生ベンチャーを上場させる可能性があると思っていましたが、それを実現したということになります。
■インキュベーションセンターの運営モデルとASEAN調査団への提言
このような私の経験と今回の調査の成果から考察すると、インキュベーションセンターの運営モデルは表1のように類型できると考えます。
不動産モデルを例に説明すると、国や地方自治体では、所有施設に安価に入居させるといった支援を行います。しかし、このような支援にしても、賃貸収入が安定していないとセンターの経営も安定しないということになります。
また、モデルにより育成・支援のレベルもまちまちで、それについては表2にまとめました。
表1:インキュベーションセンターの運営モデル
|
モデル名 |
育成・支援
レベル |
投資 |
施設の存続条件 |
施設例 |
1 |
不動産モデル |
最小限 |
なし |
安定的賃貸収入 |
ちよだプラットフォームスクウェア |
2 |
ベンチャーキャピタルモデル |
最大限 |
シード段階 |
上場・売却 |
サムライ・スタートアップ・アイランド |
3 |
企業VCモデル
※1 |
最小限 |
シード段階 |
技術や買収 |
Startup Base Camp:サイバーエージぇント |
4 |
知的財産モデル |
基礎的 |
なし |
技術移転 |
東京大学 |
5 |
起業家育成モデル |
最大限 |
助言・紹介 |
Entrepreneurship Eco System |
早稲田大学 |
6 |
社内インキュベーションモデル※2 |
最大限 |
社内・社外の紹介 |
社内事業化や売却 |
富士通 |
※1:企業がVCファンドを設けて、ベンチャーに投資をする。技術的に興味のあるものであれば購入も考えるが、基本的には投資である。投資案件を集めるうえでインキュベーションセンターを開業する。
※2:社内の事業化案件を社内インキュベーションセンターに入居させて事業化推進を支援する。
表2:育成支援レベル
育成・支援レベル |
運営者の提供内容 |
最小限 |
個室貸し出し、インターネット環境整備、会議室、専門家の紹介 |
基礎的 |
個室貸し出し、インターネット環境整備、会議室、月例セミナー開催、専門家の紹介 |
最大限 |
個室貸し出し、インターネット環境整備、会議室、週次セミナー開催、専門家の紹介、ビジネスプランコンテスト開催、定期的進捗会議や相談、担当コンサルタントの指導、など |
■ASEAN調査団への提言
このような調査を経て、最終的に私が、ASEANの調査団に提言したのは次の3点です。
まず、一つ目は、Entrepreneurship-Eco-System を大学に取り込んで、起業家育成モデルでインキュベーションを運営することです。二つ目は、Born ASEANベンチャーの起業支援するために、ASEAN全体をカバーするベンチャーキャピタルを確立することです。さらに三番目としては、日本企業のASEAN進出を支援するような活動も兼ねるインキュベーションセンターを整備することです。
このような活動がASEANと日本の紐帯の強化につながると期待しています。
インキュベーションセンターの運営やASEANでの展開に興味のある企業の方はこちらまでお問い合わせください。
(担当:石黒)
「アセアン人材育成プログラム」をミャンマー商工会議所で実施
■日本人と現地のビジネスパーソンが協働で学び考える
「ASEAN人材育成プログラム」を11月26日から12月4日の9日間にわたり、ミャンマーのヤンゴンで実施しました。このプログラムは文部科学省の「大学等産学官連携自立化促進プログラム」の一環として実施されているもので、特定非営利活動法人アジア科学教育経済発展機構が早稲田大学研究推進部より委託をうけて運営しています。受け入れ先としては、ミャンマー商工会議所(UMFCCI:Republic of the Union of Myanmar Federation of Chambers of Commerce and Industry)が協力をしてくれました。
今回の実施内容は昨年度(昨年度の実施報告はこちら)のものをベースとしており、プログラム実施地域への進出を計画する日本企業が現地調査と現地で活躍できる人材育成を兼ねて社員を派遣し、その社員は現地の若手ビジネスパーソンとともに調査を実施する、というものです。
今年度のプログラムには、7つの日本企業から8人が参加しました。いずれの方も、将来はASEAN地域に派遣を予定されている幹部候補社員です。参加者はそれぞれ、このプログラムで達成すべき課題を自社から与えられています。例えば、「アウトソーシング先候補を探してくる」(IT企業)、「総代理店を探す」(化粧品メーカー)、「各種学校設立の可能性を探る」(教育業)などです。
一方、現地での参加者として協力してくれた人は、日本の国際大学や一橋大学への留学経験者を含む、合計28人でした。そこで、日本人1人と3人程度のミャンマー人とでチームをつくり、そのチームで各日本人が抱える課題の解決にあたることとしました。チーム内の共通の言語は英語ですし、講義や発表も英語で行なわれますから、日本人の参加者もレベルに関わらず英語でコミュニケーションをせざるを得ません。
■「理論と実践」を織り交ぜたプログラム
このプログラムは、大きく分けて二部構成になっています。最初の5日間では、各企業の現地進出戦略のたたき台としての第1版を完成させることを目標とします。その後の4日間では、ヒアリング調査やデータ収集などを行い、たたき台を見直した改訂版を策定します。
詳細な日程は次表のとおりです。座学研修のみならず、実地調査や企業訪問、発表などを織り込み、多面的な要素を入れています。また、パーティの場も設けられ、参加者同士の距離が近づくような工夫もされています。
表:プログラムの日程
■「知識と戦略の同期化プロセス」が好評
このプログラムの最終目的は、日本企業の現地進出戦略を日本人社員がミャンマー商工会議所所属の現地企業の若手社員とともにチームを組んで策定することにあります。これを策定するプロセスから得られるメリットは非常に大きなものがあります。
まず、日本企業からの参加社員にとっては、次のようなメリットがあるといえるでしょう。
・ ミャンマーを中心にしたASEAN地域でのネットワーク形成
・ 英語によるビジネスコミュニケーションスキルの向上
・ 現地のビジネスマンを指揮するためのリーダシップの研鑽
・ ASEANのビジネス環境の理解
・ ASEANにおける自社のビジネスモデル策定
・ アトリビュート分析など戦略論応用力の取得
一方、プロジェクトに参加した現地企業の社員にとっては次のようなメリットが考えられるといえるでしょう。
・ 日本企業や日本的マネジメントの理解
・ 戦略論の理解
このように理論と実践を繰り返し行なうことで「知識と戦略が同期」す意義は非常に大きいものと思います。特にミャンマーと日本が共同で学習と実業を取り掛かるという(Knowledge Synchronization)コンセプトの有効性について、ミャンマー商工会議所(日本の経団連に相当)ウィン・アウン会頭も高く評価してくれました。会頭の後押しにより、プログラム実施中に地元の2つのテレビ局が講義やチーム作業の状況を報道してくれました。
今回の成果について、参加者対象に行なったアンケート調査などの仔細な分析はこれから行なうところですが、その成果を踏まえてプログラムを改訂していこうと準備しています。